いしいしんじ が久し振りに新刊を出しました。
それを記念して、青山ブックセンター本店にてトーク&サイン会。 行ってきました、晴れた青山。 仕事じゃなく行くのはいつ振りだろうか。 浮かれてて本をじっくり見るような真似は出来なかったけど、好きな本屋さんのひとつです。 今月アタマにも、オープンしたてのブックファースト新宿店で古川日出男との対談イベントがあって、ひと月に二度もいしいさんに会えるなんて、幸せすぎる。 髪が伸びてて、本人いわくブルックリンで使ってたシャンプーのせいでクリクリパーマに。 黒のジャケット(くまちゃんピンバッチ付き)に茶色いネルシャツ、サーモンピンクのパンツ(新宿の時も確か同じの)、見えにくかったけど多分ゴールドのスニーカー。 可愛い…。相変わらず可愛い…。 最近いしいさんが行っている「その場で小説を作って書きながら朗読」を中心に、新刊『四とそれ以上の国』の話がやっぱり大多数。 あとは、いしいさん自身の小説の書き方とか読み方について、もうすぐ京都に越しますって話、今書いてるもの、これから書くものの話。 よしもとばなな の『彼女について』を絶賛していて(いわく、今年No.1の小説)、読まなきゃ。と思う。あと谷崎潤一郎も。 メモ帳もペンも忘れて何も書き留められなかったけど、ただひたすら話に聞き入るっていうのも、気持ちよくて楽しかった。 結局は残ったものが大事なんだろな、とも思う。 トークの終了後にサイン会。 前々から思ってたけど、アタシは(例えそれがいしいさんとか、大好きな人のものであっても)サインをありがたがらない性分みたいだ。 例えば、本人にサインして貰えて握手やら写真やらが撮れて、ていう場と、何百人って人が聴講できる講演でしかも自分の席は後ろの方で、て場と、どっちかにしか出れません、て言われたら、おそらく後者を選ぶなぁ、と。 いや、そのサイン会でじっくり本人と話せます、てことだったら話が違ってくるけど、それが一瞬だったら、それよりもその人のことをもっと知ることが出来る方を選ぶんだなーきっと。 いしいさんは、サイン会だけってやらない人だけど(サイン本はいっぱい作る)、それだけだったら行くかどうか分かんないな。と思った。まぁ、たぶん行くけど(なんだよ)。 サインて、要は他人に対して「自分はこの人に会いました」て証拠だから、そんなもん、持ってても・・・ねぇ。いしいしんじ なんて若干マイナー(でもないんだけど)な作家なら、尚更。 でも、いしいさんはサインに絶対 絵を入れてくれるので、それを集めるのは結構 楽しかったりもします、実は。へへ。 所詮ミーハーですな。 新刊はこれから読みます。来週末かな。ワクワクする。 ▲
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| 2008-11-30 23:45
| いしいしんじ
![]() 昔、他の出版社から出ていたものを、新潮社が文庫化しました。 新潮文庫におけるいしい作品の装丁は、どれも素敵でとても好き。 いしいしんじ を愛してる人が担当編集者なのかな? と考えると、幸せな気分になる。 新潮社のような文芸の大御所出版社は、雑誌・単行本・文庫本で担当が別れてるんだって話を、就活中に何処かで耳にして、んー。やっぱデカイところはすごいわね。と思った記憶があります。余談。 東京の各地、例えば新宿、例えば浅草、例えば田町、いろいろな場所に「ちなんだ」短編がまとめられたもの。 氏のエッセイに近い(のであろうと思わせる)ものもあれば、小説といえる創作もあって、多種多彩。 最近の短編集とは、やはり一線を画した、 「今とは(作家としての)時代が違うものだな!」 と、ハッキリ分かる代物。 今では滅多に見られない辛口な表現とか悪態とか厳しい風刺とか、が、散りばめられていて、非常に興味深い。 若いなーいしいさん! って、何だかムショーに嬉しくなる。 でも、今につながる、静かだけど激しくて切ない物語もちゃんと含まれていて、ここを通過して今現在のいしいしんじ があるのだなぁ。 そういうことが知れて、やっぱりまた、愛しくなってしまうのです。な。ふふ。 いちばん好きなのは「クロマグロとシロザケ 築地」。 ううう。 もうその辺にゴロゴロしてる恋愛小説なんか目じゃないぜ! てね。 なりますよーもう。 自分以外の誰かに夢中になって切実になって、て、出来ないんだろうなー自分はきっと。 と、振り返ってみたりもするのです。 好きだー好きだー大好きだー。 次の新作、心待ちにしてますよー。 ▲
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| 2007-11-11 23:07
| いしいしんじ
新宿ジュンク堂にて、「みずうみ」刊行記念のいしいしんじトークイベント。
青のストライプシャツに白いジャケット。 襟元に大き目の缶バッヂ。 足元はスニーカー。 パンツが・・・赤いジャージ。 相変わらず不思議セレクト。 可愛い! ワクワクしながら開演を待ち、ワクワクしたままお話を聞き、ワクワクしなおして帰って来ました。 サイン貰う時に言いましたよ。 「いつか編集者になって仕事依頼に行くんで、待っててください。」 自己満足! あとは有言実行あるのみです。 アタシが世界を愛するための希望。 名刺持って会いに行く日を目標に。 ムーンブーツの視力が回復しますように。 ▲
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| 2007-04-15 00:00
| いしいしんじ
![]() いしいしんじ最新作。 2年ぶり、と聞いて少し驚く。前作からそんなに経ってた? 時間の流れがよく分からない。短編を読んでたからかな。 何にしろ、待ってたから新刊は嬉しい。 「ポーの話」で作風が少し変わって、次はどうくるかな。と思ってたら、ガラッと、とまでは言わないけど、でも確実に、とても大きく今までとは違っている。 これまでの私が思う いしいしんじ らしさ、は失われていなくて、新たなものが付け加わった感じ。 新しい。 観念的な表現が増えて、一本 筋の通った物語(起承転結)というのが無い。 輪郭がぼんやりぼんやりしてて、つかみどころがない。 ふわふわしてて、正直、第三章の最後の方は、読んでて少し辛くなった。 この先に明確なものは見えないんだろうなぁ、と思うと。 キパッとしたテーマを求めているつもりはないけど、なかったけど、やっぱりそういう傾向にあったみたい。ていう自己分析が図らずも。いや、そんなことはしなくていいけど。 すごーくすごく大きなものを、いしいさんは見つけたんだろう。 人生とか世界とか、そういうものの途方もない大きさを見つけたんだろう。 この世の在り方の不思議さとか、必然性とか、そういうものに呑まれるしかない人間の小ささとか、だからこその幸せとか。 そういうものを見出したんだと思う。 それは「ポーの話」にも通じるけど。 第一章は大きな湖のほとりにある村の話。 第二章はタクシー運転手の話。 第三章は園子と慎二とボニーとダニエルの話。 世界は順々に広がり、そして現実(2007年の日本)に近づいていく。 自分たちの名前で、自分たちの話を書いたいしいさん。 その意図を私は、インタビュー記事からはイマイチ読み取れていないけど、きっと、いしいさんにとって必要で必然で自然な流れだったのかなぁ。と思うと、この話も、大事に愛しく思いたい。 そういう風に、いしいしんじって人間まるごと、好きになりたい。 その物語だけじゃなくて。 4月14日に、トークショーに行ってきます。 ああ楽しみ。楽しみ。 今度はきっとサインを貰おう。お話をしよう。 いつか編集者として会いに行きます。て、言うんだ。 きっと言うんだ。 ▲
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| 2007-03-30 23:11
| いしいしんじ
いしいしんじ特集の「文藝」2006年秋期号を買う。
対談、ロングインタビュー、旅行記。 ぎっしり みっちり、いしいワールドを読み解くヒントが詰まってて、非常に嬉しい。 こんなに好きになる作家って、そうそう いない。 三崎のおうちを訪ねたい。 お友達になりたい。 いや、いっそ、園子さんになりたい。 (園子さんは、いしいさんの奥さん。いしいさんを通して語られるこの人も、素敵な人です。) これは もう、恋だなぁと思うよ。 でもねぇ、いしいさん自身にも、なりたいよね。 正直ね。 とても とても、憧れるよね。 何で好きかって言ったら、自分じゃ絶対できない生き方をして、自分じゃ絶対 書けないものを書いてるから、だから好きなんだけどさ。 それでも やっぱり、いしいさんになりたいなぁ、と、思って、しまうよね。 ▲
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| 2006-07-19 01:02
| いしいしんじ
て、懲りずに いしいしんじさんの話ですけど。
ゴメンね身近な男子とかのことじゃなくてさっ。 前にも話題に出しましたいしいしんじのごはん日記が、最近の安定剤。 更新されてると無性にほっとして、安心する。 書いてあることは何てことないんだけど、ちゃんと いしいワールドが展開されてて、凄いなぁと思う。 小説と違って辛くないから、全力任せきり完全もたれかかり状態で読めるのがいい。 色んなことを切り捨てた淡々とした文章が、アタシを落ち着かせる。 ともすればブレがちな心を、すとんと元通りにしてくれます。 穏やかな世界が何処かにあることを知りなおして、ほっとするのかもしれない。 怖くない痛くない辛くない毒もない腹も立たない、そういう日記を書いてくれている いしいさんに、アタシはとても感謝したい。 ありがとうって言いたい。 もうすぐ新刊が出ますよー。 刊行記念のトークイベントがあると知って、絶対 行く! と思ったら、その日アタシは浜松にいるんでした。残念。 イトコの結婚式に出るために帰るの。楽しみ。キャバリアとバーニーズが見れる。むふふ。 こないだ、妹さんの彼氏と友達が犬連れで遊びに来てて、ウチの柴に加えてボーダーコリーとシェルティの子犬とミニチュアダックスの子犬が来てて、たまんなかった。 多頭飼いしたくなった。 妹さんの彼氏にボーダーコリー置いてきなよって言ったら困った顔して笑われた。いいなぁ、でっかいの。 でも子犬たちもまた可愛くて。 ダックスは既に子犬と言えるサイズを越えていたが・・・多分あの子ミニチュアじゃないよ。 シェルティはまだ毛がワシャワシャしてて、子供らしかった。でも あっという間にうちの子より大きくなってしまうのじゃろうな。 また来てくんないかな。幸せだったな。 このままずっと冬だったらどうしよう。と思ってしまうような寒さが続きますね。 しかも雨だ。 まいっちゃうやぁ。 でも うずくまってるのは勿体ないから、ちゃんと動いて自分から熱を発しなきゃね。 全部が不愉快と思う日々からは、なるべく遠ざかっていたいですから。 ▲
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| 2006-02-01 01:18
| いしいしんじ
「男の夢」、早速 見逃す。あーあ。
仁君が出るというので「神はサイコロを振らない」を見る。ちょびっっっとしか出なかった。 まだ第一話だし。市川実日子にスポット当たる話がきっとあるから、そこで出張る筈だ。彼女の旦那役なので。 ------- レポートに乗じて、いしいしんじ について語ってみた。 雑誌や新聞のインタビューや特集記事、彼の書いた書評など、資料集めをして、斜め読みでだけど、彼の著作を改めて読み返す。 かなり楽しい作業だった。 付箋貼って蛍光ペンで線引いて、いつだかに寺山修司の劇場都市についてレジュメ作った時ばりに楽しかった。 いしい作品の何に自分が惹かれてるのか、整頓して考えるいい機会にもなった。 そうやって作業を進めて、実際にレポートを書いて、そういうことしてるうちに卒論は いしいしんじ でやろうか、と思えてきた。 今まで卒論のことなんか大して考えてもこなかったけども。 多分 論文より小説の方が楽だからそっちに流れるんだろうな、とすると創作指導を取らんといかんな、という程度で。 でも、折角 現代作家で卒論書ける所にいるんだし。 論文があふれ返ってる作家で書くよりは、よっぽど楽しいんじゃなかろうかと。 思ったんですが。 取り敢えず、そういう方向で引き続き資料集めなり読み砕きなりをしていこうかと思った、テスト最終日。 あとレポート一本しあげれば春休みだーい。 ------- ユリイカと美術手帖の最新号が、図らずも(だと思うけど・・・)漫画の特集。 勿論アプローチの仕方は違いますが、パラパラ見てみるとユリイカの方が興味ひかれますな。 あずまきよひこインタビューだけマジ読みしてきた。学校の図書館で。 「よつばと!」はやはり、「あずまんが大王」で定着してしまった萌え系作家というイメェジを払拭したい思いのもとに描かれていると。 うんうん。そういう志は、大事。 「あずまんが大王」も無論 好きだが。でも、それはあくまで4コマギャグマンガという側面を離れなかったからだと思う。エロマンガになった時点で興味は失せるから。 まぁ あずまさん自身、同人誌やってた人なので出身は萌えなのかも知れませんが。 言葉が氾濫しすぎてうるさくなるのは嫌な現象です。 「萌え」は別にアタシにとって大事な言葉ではないからどうでもいいんだけど、「カリスマ」が、美容師とワイドショウのおかげで普通の、何でもないツマラナイ言葉になってしまったのは本当に残念なことで。 もっとこう、キラキラした、素敵な言葉だった筈なのに。 美手帖の村田蓮爾表紙はあの小ささでも見蕩れてしまいます。ゲイジツ! でも、少女マンガの注目作品で、NANAとか最遊記とか、普通のんが取り上げられてんのはどうなのと。やたらと人気があるってだけではないのかと。まぁ、要は何で いくえみ綾とか よしながふみ じゃないんだーという文句なだけですが。マジョリティではないかな確かにな・・・。 特集がそもそも「マンガは芸術か?」だしな。絵が綺麗なん選びますわな、そりゃ。 今 気になってるのは「団地ともお」。結構な巻数を重ねているようなので なかなか手をつけられず。 「働きマン」の3巻はまだですかっ! でも安野さん描き過ぎだよね。体 壊さんでほしいな。 どっちか(ユリイカかな)に浦澤直樹の写真が載ってたんだけど、若いんですね! ずっと昔から描いてるから結構 年いってるかと思いきや。若く見えるってだけかな。四十ぐらいに見えた。 レポート終わっても雑誌類 読みにしばらく学校に行こうかと思います。凄い量のバックナンバーがあることを知った二年目の冬。実は凄いんだな学校図書館。むっかーしの新聞も読めるし。 でもダ・ヴィンチが商学部読書室にしかないのは間違いだと思うの。それこそ文学部図書館にあって然るべきものなんじゃないかと思うの。うん。 ▲
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| 2006-01-19 01:31
| いしいしんじ
秋の夜長はウツの元。
どっせい!! ----- ![]() いしいしんじ・著。 火事で聴力と恋人を失った植田さん。 雪深い山奥でひっそりと、最低限の仕事をこなしながら暮らす。 オシダさんや食堂のおかみさんは いい人。 ある日、氷った湖を滑って林母子が「向こう側」からやって来た。 娘のメイは、草木や鳥の名前に詳しい、よく笑う女の子。 スケートも上手。 植田さんの心の何処かにあったしこりを、とかしてくれた女の子。 短いお話。素敵なお話。 白い、きれいな装丁が好きです。 植田 真さんという方が絵を描かれてます。この絵も、また、素敵。 いしい作品の評で、「心が温まる」という言葉を、とてもよく目にします。 実際、そういう部分はある。多分にある。 でも、私にとってのいしい作品は、手厳しい現実を突きつける、幸せになるには一筋縄ではいかないんだ、それ相応の代償を払わなきゃいけないんだ、そして皆が幸せになれるとは限らないんだ、ということを訴えてくる、もので。 素直に「イイハナシだったー」なんて、とてもじゃないけど言えない。 温かさよりも切なさが勝る。思い出すと辛くて泣ける時もある。 読むのに、ある意味、覚悟の必要な作家さん。 でも、この物語は何だか素直に、心温まる、気持ちのいい読後感です、と言える気がする。 爽やかな、とすら言っていいかもしれない。 短いせいかな。余剰が無い。心があまりブレないうちに、読み終えることができるから。 メイの台詞で、最後のほうに書かれてる。 私たち、こんなすばらしい世界に住んでいるのよ! あ、言われた。と思った。言われてしまった。 こういう台詞が、ちっとも、これっぽっちも陳腐にならない。 いしい作品のチカラは、そこにあるんだと思う。 その台詞に、頷かざるを得ない展開をくれる。 その通りだと思わせる物語をくれる。 すごいチカラ。すごい説得力。 優しい、優しい物語。 ----------- 追記。 いしい作品に関しての記事を読み返してみたが・・・意外と、同じようなことを繰り返し言ってますね。あらら。 優しいハナシ、て感想が一貫してら。気付かなかった。 でも厳しいんだよなー。 「植田さん」も、時間がたつにつれ何だか切なく思えてきました・・・。 でもそれは多分 自分が今、幸せじゃないからだなー。 扱いに困る作家だ。 でも大好きなんだよなーっ。 ・・・青汁、みたいな? ちょっと違うか。 ▲
by ling-mu.m
| 2005-10-29 21:58
| いしいしんじ
![]() いしいしんじ・著。 発売と同時(五月)に買い、ずっと読むタイミングを逸してましたが、やっとこ読み終わりました。 いしいしんじ、2年振りの新作書き下ろし長編。待ってた。 相変わらずの、厳しくも優しいファンタジィ。 現実のイタさと夢の心地よさを等分に含んだ物語。 困難なくして、幸せは見つけられない。この人の小説には、そういう信念が一貫してあると思う。 ただただ柔らかくて穏やかな世界は許されない。ありえない。 簡単に言ってしまえば、山あり谷ありな人生。 でも、そんな安易な言葉では片付けたくない複雑な造りをしている世界。 超現実。スーパーで、メタ。 あくまでファンタジィを描きながら、そこでは決して終わらせない現実味を帯びている。 ポーはうなぎ女の息子。うなぎ女たちの大事な宝。 泥河で右岸と左岸に区切られた街。川に架かる無数の橋。 500年振りの大雨が、ポーを別の世界へ誘う。 いしいしんじの書く話は悲しくて切ない。 でも何処かで憧れを抱かせる。楽園が描かれている訳では決してないのに。 ▲
by ling-mu.m
| 2005-10-12 02:32
| いしいしんじ
好き:★★★★☆
![]() 何となくね、わぁぁーって、泣きたいのね割と常に。 理由はよく分からん。分かる・・・理由ができる瞬間もあるけど、変にぐるぐる渦巻いてる感じで、特に理由もないのに泣くのは嫌だなーと思って結局 泣いてなくて。 で、解決策として適当に感動の涙とか流せば落ち着くのかしらんと思っての、セレクション。 一応、厳選はした。ありきたりな感動はしたくないなと思って。 いしいしんじ・著。 いしい作品は四作目かな。「麦ふみクーツェ」のレビュー、挙げてないけど。 ジュゼッペは、色んなものに「トリツカレ」てしまう変わり者。 オペラ、三段跳び、昆虫採集にサングラス集め、探偵ごっこやハツカネズミの飼育。 町のみんなは見慣れたもので、彼が新しいものにとりつかれる度に苦笑しながら聞いてやる。 「今度はなんだい、いったい何にとりつかれてるんだい?」 そんな男がある日とりつかれたもの、それは外国からやって来た少女・ペチカだった! すごい、すごい素敵な話よ。 読み終えたばかりだけど、アタシの心はとても温かいもので満ちてますもの。 いしい作品で幸せな気分になるのは初めてです。今までは、とてつもない切なさに襲われてばかりいた。とても好きなのは確かなんだ。大好きだよ、いしい氏の書く小説は。 でもねぇ、現実の世知辛さをたっぷり含んだ物語だから、浮かれきれないんだ。この先も、この人達の人生はきっと色々 波立ちながら進んでいくのだろうなぁ、と、しんみりしてしまうの。 それが悪いことってんじゃないんだけど、そういうのじゃない、とにかく真っ直ぐなハッピィエンドっぷりが、今は求めたいものだったので。 勿論、悲しい現実も転がってる。人間が生きてる限り、それはしょうがない。避けては通れないものだから。そういうものを、この人はすごい突きつけてくる。すごく簡単に人が傷つくし、失敗するし、あっけなく死ぬし。 でも、それは物語に必要なできごとなんだ。いしいさんは、絶対にそれを無駄にしないの。 ミスチルの歌で、駄目な映画を盛り上げるために簡単に命が捨てられていく、ってあるけど、この人の書くものにはそういう安易さを感じない。ものすごい痛みと意味を持って描くから。 いしい作品のどれにも見られる傾向だけど、変わり者がちゃんと笑って暮らせてるのがいい。 疎外され理解されない者もいるけど、例えばこのトリツカレ男、何かにとりつかれちゃうとホントにどっぷりでしょうもない奴で、でも、オペラにはまって誰彼 構わず歌いながら話しかけてしまうジュゼッペに彼が働くレストランの主人は言うんだ。 しょうがないよな、トリツカレ男なんだから しばらく休みをやるよ、その癖がなおったら店にでてきな ってさ。こんな優しい話がある? その点「麦ふみクーツェ」は結構シビアだった。他人と違う人間が如何にうまく生きていくか、て話。でも、ちゃんと優しさは含まれてた。そのバランスが絶妙なんだ。 この本は、他の彼の作品に比べ薄い。一時間もあれば読めてしまう。 そのため、彼の伏線の妙はあまり発揮されていないように思う。勿論、無い訳じゃない。ちょっと少ないかなと思うだけだ。 でも、たまにはこんな単純な話もいい。ひたすらハッピィエンドを目指すには、これぐらいがちょうどいいのかもしれない。 で、当初の目的は果せたかっつーと、否。 もうしばらく、このまんまで過ごさなきゃならんみたいだ。はぁ・・・。 ▲
by ling-mu.m
| 2005-04-11 22:52
| いしいしんじ
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