人気ブログランキング | 話題のタグを見る
<< パリアッチ(pagliacci) TOYOTA CHOREOGR... >>
LAST SHOW
渋谷はパルコ劇場にて初の観劇。
阿佐ヶ谷スパイダースの長塚圭史が作・演出をした「LAST SHOW」。
出演は風間杜夫、永作博美、北村有起哉、中山祐一朗、市川しんぺー、古田新太。

舞台を観て、初めて泣いた。
泣きながら、ちゃんと生きてみようかなと思った。
記念に初めてパンフレットを買ってみた。
色んなことを考えながら帰った。
一回 整理してすっきりさせてから明日にでもレビューを。書こうと思うので。

気持ちはひとところには無いけど。
あそこで自分が泣いたことは、覚えておこうかなと思う。

--------------

追記。7月12日。
家族について描かれた芝居で記憶に残っているものってあんまり無い。記憶云々の前に、あまり観ていない気がする。
先月末に観た黒テントの「帝国の建国者」は、家族を描くことで訴えかけをしてくるけど核として家族というものは無かった気がする。
そういう意味で、「LAST SHOW」は自分にとって新鮮なホンだったのではなかろうかと思う。

小さなTV番組制作会社に勤める石川琢哉(北村)は、野心ばかり強くて才能がない。しかし、捨てられた動物を保護して動物王国を作り話題となった渡部トオル(古田)のドキュメンタリィ番組のディレクターとなり、ヤル気に満ちている。そんな彼の妻は、子役時代に一世を風靡した、現在 落ち目の女優・美弥子(永作)。琢哉と共に番組を作るカメラマン・中島(中山)の容赦ない発言のせいで渡部の怒りを買うが、彼が美弥子のファンであり彼女と引き合わせるという条件で渡部を引き止める。
そんな折、石川家を訪ねてきた初老の男性。彼は、琢哉が幼い時に別れた実の父親・勝哉(風間)だった。記者会見放送で2人の結婚を知った勝哉は、お祝いに来たと言い、家が改装中なため今はホテル住まいだという。そんな彼の訪問に大喜びし、泊まって行けと無邪気に勧める琢哉。それが、勝哉のどす黒い復讐心を果させるきっかけを与えてしまうことになる。

古田新太スゴイ。うまい。今更 過ぎて当たり前なんだけど、もうホント彼はスゴイ。
見た目 ただのデブな親父なのに。面白すぎる。かつて痩せてて格好良かったなんて・・・想像がつかない。
中山祐一朗も、正直 んー・・・ちょっと下手? とか思ったけど、中島っていうハチャメチャなキャラをとてもよく作りこんでた。ベテラン達に全然 圧倒されてない。素敵。
永作は可愛い。美弥子は落ち目だけどそれなりにプライドも持っててちゃんと強い女で、勝哉にものっ凄い脅されるんだけど負けてなくて格好良い。泣き寝入りしない強さ。いい女。

総じて、キャラ作りがすごくいい。

勝哉は「琢哉が生まれなければ自分は妻と別れなくて済んだしもっと違う人生があった筈だ」て思い込んでる人で、彼に復讐したい一心で美弥子を殴ったり(子供がいるかもしれない、て聞いて腹を殴る。病院にも行かせない)、俺を好きになれとか渡部を好きになれとか言ったり(要は琢哉から気持ちを剥がしたかったのだろうが)渡部に美弥子をレイプさせようとしたりする。
その手法はあまりに幼稚で、でも彼が大人で男で腕力も言葉の力もあるばかりにその暴力っていうのは本当に見るに堪えなくて辛い。
5月に観に行った「ハメツノニワ」以来、久し振りにアタシは途中退場したくてしたくてたまらなかった。見ていられなかった。歯を食いしばって我慢しながら、長塚作品もう一生観ない、て考えてた。

美弥子さん最大のピンチの時に勝哉に殴られて気絶してて何処かに閉じ込められていた琢哉が戻って来て(ヒーロー!)、勝哉制裁かっっ、てなるんだけど、その前に渡部の真相が明らかにされる。
渡部は実は動物愛護の優しい人なんかではなくて、犬猫を食べる人だった。最近 彼の家の近辺で珍しい種類の犬猫が消える事件が多発してたのは好奇心に駆られた彼に盗られたせいで、でも全部を養うことは出来ないから食べるんだ、と彼は言う。
彼の弁ではそれは愛ある行為で、可愛いから食べるんであって、愛情をこめて食べてあげるのがその子のためで、一番 貧しかった時に飼い犬のピーターを食べたのがきっかけだった。
その貧しい時代を共にした母親が死んだ時、不味かったけど俺は母ちゃんを食べた、全部食べてあげた、それは俺が母ちゃんを愛してたからだって(ちなみに母親は犬猫を食べない)。
そういうキチガイな愛の形。

現代日本じゃ犬猫は明らかに牛や豚とは扱われ方が違って、アタシも物心付く前から家には犬がいる生活をしてるからやはり彼のような存在が実際いたとして(いるんだろうな、どっかに絶対)、許せないなと考える。愛があるからって食べない。例え老衰や病気になって死体になってからだって食べない。どんなに美味しくても。

長塚氏はまた酷い演出をする人でさ、まずちゃんと生きて動いてるキャバリアを登場させるのよ。ショコラっていう。その子が次に発見された時には体のうしろ半分が食べられてて真っ赤な肉がビロンビロンしてる、ていう・・・。最低。最初は直視できなかった。笑う前にうえぇぇ(泣)て。でもここでは泣いてない。

何処で泣いたかと言えば、勝哉が自分の気持ちを吐露して「お前なんか生まれなきゃよかったんだ」て琢哉に言って、どういう流れかは忘れちゃったんだけど(だってあまりにその先が衝撃的だったから)、勝哉の指示で美弥子が渡部に食べられそうになる。琢哉は捕まえられて助けられない、万事休すっっ・・・てなった時に、美弥子のお腹がどんどん膨れて、股の間から出てきたのは太ったおっさん。羊水まみれの。

勝哉に殴られて駄目になったかもしれない、というか最初からいなかったと美弥子が言い張った(そう考えないとやりきれないから、て ここでもまた超人的な強さを見せる)、その子供が「お母さんがあまりにピンチで早く大きくなりたいと思ったら大きくなりすぎちゃって出てきてしまいました」て言う。そんで勝哉に説教する。

「子供は生まれてくる家を選べないし親を選べない、親も子供を選べない」
「生まれてこなきゃよかったのはお前だよ」

て。ここで泣いた。

勝哉は結局 自分で手首を切って死んでしまう。子供も、美弥子に「貴方じゃないと嫌」て引き止められるんだけどどうせは流れる運命だったから、と言って消えてしまう。我が子に示された母の愛。息子への復讐心で生きていた父の最期。

何で泣いたかって、それは勿論 感動ではなくて、まぁ そこはいいや。書くのやめ。

長塚圭史はちゃめちゃだなーって。そういう印象。
by ling-mu.m | 2005-07-11 23:49 | 芝居/舞台
<< パリアッチ(pagliacci) TOYOTA CHOREOGR... >>