カテゴリ:いしいしんじ( 12 )
プラネタリウムのふたご
b0026230_115628.jpg好き:★★★☆☆

プラネタリウムに捨てられていた、ふたごの男の子。ひとつの彗星をふたつに分けて名付けられた二人は、解説員の泣き男をお父さんに、化学工場で生計を立て、昔ながらの掟やしきたりを守る小さな村で育つ。様々な人と関わりながら、様々な出来事が起きる日常を繰り返し、二人はやがて、大きな運命の岐路に立ち、それでも日々はいつの間にか、日常を取り戻しては進んでいく。

いしいしんじ・著。
いしい作品ふたつめ。
結構 分厚い本です。ハードカバー(20cm)で454頁。
中身もどっしり。物語の中で、赤ん坊だったふたごはだんだんと年を重ね、明確な年齢は出ていないけども、最後には二十代後半ぐらいにはなってるんじゃないかな。
彼らを取り巻く大人たちが、結婚したり昇進したりすることでも、時の流れを感じます。
これほどの分量で、しかし全然 飽きがこない物語を書くその力に呻いてしまう。すごい、なぁ。

読み終わったあと、私はとても、哀しさに近い、へこむ感じの切なさを覚えて、胸のうちが重くてしかたない(ちょっと現在進行形)んだけども、その理由を考えてみたら、出てくる人みんながみんな、優しすぎるからじゃないかな、と思い当たった。
すごく、みんな、優しいのです。で、その優しさは何処から来るのかしらと考えてみると、発生源は愛なのじゃないかなと。誰かを、何かを、愛してて大事にしてあげたくて声を荒げたくなくて許したくて、だから優しくするのかなと。そうすることで、自分が傷つくことも厭わずに。
いや、こう書くと、バカがつく手合いの善人ばかりが出てくる話なのかい、と勘違いされるやもですが、そうじゃない。
そうじゃなくて、そんな綺麗な物語では決してなくて、微笑みがこぼれるようなラストなんか用意されていなくて、ただただ切ないばかりで、私はその気持ちを持て余して仕方がないのだけれど。
でも、いい人ばかりなのは本当。人って誰でも根本はイイヒトなのかもしれない、と、性善説を唱えたくなるような。

優しくできるのは愛のある証拠。
ここには、沢山の愛が散らばってる。色んな形で。甘い言葉を直接 囁くばかりが愛じゃないってことを知る。むしろ、当人は気付かないのにそんなことお構いなしで注がれる愛の方が、沢山 描かれている気がした。
果てしない、途方もない、底無しの優しさ。
[PR]
by ling-mu.m | 2005-03-10 01:17 | いしいしんじ
ぶらんこ乗り
b0026230_3541450.jpg好き:★★★★☆

高校生になった「私」に、おばあちゃんが差し出した数冊のノート。それは、最愛の弟が書き綴ったあの頃の日々と沢山のお話。よみがえる、幼かった私と弟。私に、弟に、ふたりに降りかかった出来事たち。途方もないやさしさと哀しみを内包した物語。

いしいしんじ・著。
人気のある作家として認識し、いつか読まねばと思いながら長い時を経てやっと手に取りました、いしい作品。
文庫になってるのがこれだけらしく、手始めに読んでみた。

久し振りに、小説を読んで泣きました。
「とても、とても、いいところで」の最後で涙がこみあげ、「三枚目のはがき」を読みながらぶわぁっと。泣きました。気持ちよく。

「私」の一人称で、弟のこと、父さん、母さん、おばあちゃん、犬のことが描かれる。それから学校のことや町の様子もちらちらと。
でも一番 大事にされてるのは弟との交流。
とんでもない天才で、哀しい運命を背負ってしまった弟は、たくさんの「おはなし」を作っては語ってくれた。「私」はそれが大好きだった。そして弟が大好きだった。弟もおねえちゃんが大好きだった。
でも、「私」は弟の人と違うばかりにどこまでも孤独な心を、埋めることはできなかった。彼はどうやっても一人ぼっちだった。それが何とも悲しくてもどかしくて、でも、現実なのかなぁと思った。ハッピィエンドはずるいのかなぁと思った。

弟の語る「おはなし」が、もうそれ自体で絵本作れるんじゃないの、というほどに完成度が高くて素敵で大好きです。
「私」の性格も、勝気で口が悪くて気分屋で、あら何だかアタシみたいという子なので好き。全然「いい子」ではないのです。そこがいい。
間抜けな母さんや、辛辣なおばあちゃんも好き。おばあちゃん、カッコイイです。そしてちょっぴり可愛らしい。

この人は、すごい。
単純にそう思います。すごい物語を書く人だ、と、デビュー当時 言われたそうです。なるほどその通りです。
「小説」はつくりものであって現実の鏡写しではないのだからルールなんてないのだね! と。
目から鱗とはこういうことを言うのかもしれません。軽く電流が走る感じで、読み進めてました。
バランス感覚がとてもいい人なのではなかろうかと思います。いやいや現実ではありえないですからーということを、そう言わせつつももっともらしく書く・・・しらけさせないのです。説得力があるのです。いやはや。

ぶらんこが重要なモチーフとして使われているのですが、ここまで美しく無駄がなく小道具が使われた作品を、かつて読んだことがあっただろうか。
犬の設定と、その使い方も素晴らしい。家族の彼への接し方もリアルで、それぞれの個性を映し出している。何にも、ちっとも、無駄じゃない。
ものすごい構成力です。天然だったら怖いです。ものっすごい考え抜いての結果であって欲しいなー。何しろ天才肌にはすぐ反感を抱くアタクシですので。

この物語に関しては感服です。
はやめに他の著作も読みたいです。好きな作家さんの一人に、加えられるといいな。
[PR]
by ling-mu.m | 2005-02-22 04:34 | いしいしんじ