カテゴリ:活字/漫画( 44 )
泣かされるかと思った。
ボディブロウ、喰らったみたいな。
やられた、て思い。

分かりやすいし感動しやすいから好きとか言いたくないんだけどさーホントは。
谷川俊太郎。

あー悔しい。


詩集「はだか」より。

「さようなら」。

  ぼくもういかなきゃなんない
  すぐいかなきゃなんない
  どこへいくのかわからないけど
  さくらなみきのしたをとおって
  おおどおりをしんごうでわたって
  いつもながめてるやまをめじるしに
  ひとりでいかなきゃなんない
  どうしてなのかしらないけど
  おかあさんごめんなさい
  おとうさんにやさしくしてあげて

  ぼくすききらいいわずになんでもたべる
  ほんもいまよりたくさんよむとおもう
  よるになったらほしをみる
  ひるはいろんなひととはなしをする
  そしてきっといちばんすきなものをみつける
  みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる
  だからとおくにいてもさびしくないよ
  ぼくもういかなきゃなんない


第一印象の衝撃は忘れまいよ。多分。
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by ling-mu.m | 2005-04-23 23:37 | 活字/漫画
不在
b0026230_23194370.jpg好き:★☆☆☆☆

宮沢章夫・著。
宮沢氏が遊園地再生事業団の主宰者だと知ってHPに行ってみたら、観に行こうとしていた芝居「トーキョー/不在/ハムレット」の作者だと判明、これも何かの縁だし折角の機会だからと彼の演習を履修しようと思ったら見事に落選した。ので、やってられなさ いっぱいで読みましたこの小説。

読みにくい。
第一印象からそう思ったけど、最後まで読みにくかった。
小難しいとか時間がかかるとかいう読みにくさではなく(バイトの行き帰りの電車の中だけで読んでたけど2日ぐらいで読めてしまった)、読点をなかなか打たないんだよ この人。一文が長くて、あっち行きこっち行きするから、何が大事なことなのか焦点が凄くぼやかされて、惑わされる。
例えばこんな風。

  片付けも済み、勤めている者らに挨拶をすますと、ようやく北川辺ライブラリーをあとにし、
  家族ら、夫と子ども、そして、同居している夫の弟幸森、姑の安江がいない家に戻る夜が
  久し振りの解放にも感じられもしたが自転車で家に向かう途次、少し走った場所にある町
  役場のがらんとした駐車場に一台、濃紺の車があるのを見て取りぞっとしたのは、車に見
  覚えがあったからだが、車について詳しい知識を持たない巻子にはそれがなんという車種
  かわからず、ただ、色や形だけでそれを認識した。

長い。
いちいち疲れさせるこの文章の書き方は、わざとなのかホン書きもやってる者の癖なのか。
これひとつ読んだだけじゃ判断がつきかねる訳ですが。

読んでて思い出したのが、以前 観に行った「FRAGMENT」という芝居。
この芝居の中で長い長い独白のシーンが最初と最後に二回あるのだけど、そのときの台詞回しが確かこんな感じで。
芝居でやられる分には分かりにくさってのはないんだ。呼吸と一緒に出されるものだから、くぎりは向こうが与えてくれる訳でしょう。こっちで判断する必要がないのね。だから飲みこみやすい。
それを小説でやられちゃうと、もうずらずらと読むしかないから、大変なんだよ。負担が全部こっちにくるもんだから。

「トーキョー/不在/ハムレット」はこの話・・・そのものじゃなくても、これがベースになってるような芝居だと思うのだけど、そしたらきっとまた違う風に見えるんだろうなぁ。

最初は舞台を想像しながら読んでみたのだけど、すぐに無理だと思って諦めた。
こんな素人に簡単に想像できたら演出家いる意味ないもんな。そりゃ そうだ。
そんなこと試したおかげで、舞台には思いの外 制限が多いのかも知らんなぁ、とも思った。
例えば小説だったら「車で移動した」て言っちゃえば済むところを、舞台上じゃ車に見える何かを使って空間を移動したように見せなくちゃいけない訳で。
本物走らせちゃえばいいし、とは いかないでしょうし。
そゆとこが面白いと思うんだけどね。うん。

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「FRAGMENT」の話を出したついでに。
この芝居の中での中山の台詞、「あなたの破片ばっかりです」が、凄く耳に残ってる。
ふとした瞬間に思い出す、力の強い言葉です。
ナマの、人間の、熱と血を帯びた肉声のまま、残ってる。
そういう言葉を、沢山、聞けたらいいと思う。覚えていられたらいいと思う。
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by ling-mu.m | 2005-04-10 23:38 | 活字/漫画
二十歳の原点
b0026230_0544980.jpg高野悦子・著。新潮文庫。

この本の存在は「神戸在住」という漫画で知り、二十歳でいるうちに読んどきたいなーと思っていたら友達んちの本棚にあるのを発見して、借りてきた。
読むと鬱になるよ、と言われていたけど、ホントだった。予想はしてたけどホントだった。
アタシは特に、すぐ同調しちゃう質だからね・・・。

高野悦子は立命館大学に通う女学生だった。
勉強もできて運動もできて容姿も優れてて、家族仲もいいしその家が貧乏という訳でもなし(むしろ裕福な方だったのでは)、ハタから見れば恵まれたお嬢さんだ。
でも、そんな彼女が選んだのは鉄道自殺という末路。線路に侵入し貨物列車に撥ねられて即死した。
「二十歳の原点」は、彼女が書き綴った、日記やメモや詩が記されたノートを書籍化したものである。

この本に興味を覚えたのは、彼女が学園紛争に身を投じていた、という情報による。
漠然とだけどそのあたりのことに関心があるので、読めば何か分かるかしらと思ったのだ。
あんまり分かったことはない。日記というものの性質上、独りよがりというか、「事情が分かっている」ことを前提に書くため、例えば出来事の概要が書かれていても細かい背景は自明のものとされている、という風な事態になってしまうからだ。まぁ、仕方ないことと言えばそうだ。

学園紛争をしていた時代の若者は随分 元気だったのだなぁ、という印象は常々あるが、今回も例に漏れず、彼女の目を通して描かれる闘争に、改めてそう思った。
今の大学生、つまり私に、私達に、彼らと同じ行動をすることはおそらく不可能だ。
多くの人間にとって、それは「格好悪いこと」で「無意味なこと」なのだと思う。

大学に対してアレコレ言っている暇があれば、外でもっと面白いモノを見つけてくるさ。
権力に反抗したところで何も変わりはしない、変える必要もないのさ。

そういう風に思っている・・・の、かな?
自分は当事者である筈なのによく分からない。時代は違えど、同じ年齢で同じ立場にある者なのに、どうして同じ気持ちが湧いてこないんだろう。それって不思議なことじゃないのか?

当時の大学生がどういう不満でもって当局と戦ったのか、戦ったのは果たしてマジョリティーだったのかマイノリティーだったのか、そういう基本事項から学ばないと・・・まだまだ分からない世界です69年。遠いよねぇ。36年前ですよ。オトンもオカンも高校生だよ。覚えてんのかな当時のこと。彼らの目には、どういう風にうつってたのかな。


鬱になったのは、彼女の死に対する記述とか虚無的な独白とか、そういうものにやられたからです。
最初のうちは、死は敗北だ、自殺は弱い人間のすることだ、と否定することが多いが、それでもだんだんとジレンマに陥っていく。
死にたい、けど、死ねない、死にたくない。

結局 彼女は自死を選んだ。睡眠薬を飲んだ末の行動だから、もしかしたら頭が朦朧としていたのかもしれない。
だとしたら、自分が死にに行く自覚をせずに死ねた訳で、それって結構 幸せなことなんじゃないかなーと、私は思ってしまうのです。
だって、死は甘美だもの。全てが終わらせられる、最後の逃走手段。
死にたいけど死ねないのは、怖いからだ。痛いのが嫌、苦しいのが嫌、辛い思いはしたくない。
それに理性も働くし。死んじゃったら全部おしまい、ホントに終わりにしちゃっていいのか? て。
その点、ぶっとんじゃってれば そういうもの無くして死にに行けるんじゃないのと思うのだけど。

死にはしない、と言ってた悦子さんが結局 自殺を選んだように、何だかんだ言って死ねない自分を自覚してる私も、ある日ひょいって死んじゃったりするのかな。衝動で、死んじゃったりするのかな。
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by ling-mu.m | 2005-04-09 01:26 | 活字/漫画
ふたつのスピカ
b0026230_21155466.jpg科目登録がことごとくうまくいかず腐敗しきったところに、追い討ちをかけるがごとく定期をなくした事実が発覚。醗酵寸前の最低気分をどうにかもたげようと本屋で衝動的に買った漫画。が、これ。

柳沼行・著。
メディアファクトリー、MFコミックスで7巻まで発売中。取り敢えず4巻まで買ってみた。

主人公・鴨川アスミは、人よりちっちゃくておっとりで人ならぬものが見えてしまったりする不思議ちゃん。そんな彼女の夢は宇宙飛行士になることで、困難な試験をくぐりぬけた末の養成学校生活が描かれている。

相当 恥ずかしい漫画です。
分類としては・・・そうね、金八先生あたりかしら。
なんのてらいもなく「友達の尊さ」を描いてしまう。真正面から真正直に。
「みんなで一緒に宇宙飛行士になろうね」つって、こう、手ぇ重ね合わせて円陣 組んだりしてね。
戻んない感じでひねくれちゃったアタシみたいな子は、我慢ならず身悶えてしまうようなシーンもしばしば。

でも、話はなかなか複雑で面白いのよ。
話の真ん中にでん、と居座ってる存在が、アスミが1歳の時におこった純国産有人宇宙船・獅子号の墜落事故。住宅地に突っ込んだがために、乗組員のみならず多数の民間人を犠牲にした大惨事。
アスミは勿論、彼女を取り巻く色んな人が色んな関わり方でその事故をしこりとして胸に残したまま生きている。
その人間模様が見ものです。

アスミにだけ見える「幽霊のライオンさん」がいい兄ちゃんで好き。なかなか切ない役柄ですが。
元気で口の減らない圭、美人で人付き合い下手なマリカ、幼馴染でぶっきらぼうな府中野、軽くて飄々とした秋・・・アスミを取り巻くオトモダチ達は、まぁ基本を押さえた設定かしら(何様だアタシは)。
マリカと秋は、家はお金持ちだけどいわくありげ、で、これからの展開に期待。

昔・・・小3ぐらいかなー、宇宙飛行士になりたかった時期あったよアタシにも。
進研ゼミか何かの「オシゴト事典」に、協調性ないと駄目ですって書いてあってすぐ諦めましたけど。ふふ。
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by ling-mu.m | 2005-04-07 21:41 | 活字/漫画
宮沢賢治をはじめ、詩のこと。
好きな詩を、新しい手帖に書き写した。
去年の手帖にも書いてあって、今年はやめとこうかなと思ったんだけど、さっきふと書きたくなって。
読み直して、今の時点でこれは好きだ、と思うものを写したから、ちょっと数は減ったけど。

好きな詩人は、宮沢賢治です。手帖には、「雨にも負けず」「雲の信号」「サキノハカといふ黒い花といつしょに」を写した。これから増やしていきたいと思ってます。
去年のには「小岩井農場 パート9」の一部も書いてあったのだけど、抜粋の仕方が難しいなと思って、今年はやめにしたのだよ。でもそのうちまた書くかも。好きは好きだから。

「雨にも負けず」は、最後のところ、

  日照りのときは涙を流し 寒さの夏はオロオロ歩き
  みんなにデクノボーと呼ばれ
  ほめられもせず 苦にもされず
  そういうものに わたしはなりたい

これが、アタシの理想かもしれないなぁと思う。でも、違うかもしれないなぁとも思う。
でも、最初の部分、

  欲はなく 決して怒らず
  いつも静かに笑っている

これは、まぎれもなく究極の理想像だよなぁ。


「雲の信号」は、えらく気持ちのいい詩なのですよ。

  あゝ いゝな せいせいするな
  風が吹くし 農具はぴかぴかひかつてゐるし
  山はぼんやり
  岩頸だって 岩礁だって
  みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
      そのとき 雲の信号は
      もう青白い春の 禁欲の空高く掲げられてゐた
  山はぼんやり
  きつと四本杉には 今夜は雁もおりてくる

せいせいすること、最近ないな。あるといいな。


カール・ブッセの「山のあなた」も、出会った時から好きな詩のひとつ。
上田敏が、このうえなく美しい日本語で訳してくれたからでしょう。

  山のあなたの空遠く
  幸(さいわい)住むと人の言う
  ああ、われ人と尋(と)めゆきて
  涙さしぐみ、帰りきぬ
  山のあなたの尚遠く
  幸住むと人の言う

山の向こう側に幸せはあるんだって。
行ってみたけど見つからなかった、悲しい気持ちで帰ってきた。
山のもっともっと向こう側に幸せはあるんだって。
そんなのいつか手に入れられるのかな。
・・・でもねぇ、虚しさばかりではないと思うんだ。だって幸せは、遠くとは言え、あるんだもの。
いつになるかは分からないけど、追いかけてみて、その辿りつくまでのみちゆきが、大事なんじゃないかなぁ。

井伏鱒二の訳した、干武陵の「勧酒」も、気持ちのいい日本語。

  この杯を受けてくれ
  どうぞ なみなみ注がしておくれ
  花に嵐のたとえもあるぞ
  さよならだけが人生だ

出会いの数だけ別れがあって、とは、ミスチルも歌っておりますが。
それでも出会いたいじゃない。別れるための出会いじゃないもの。
別れは必然かもしれないけど、それはその時が来たら、こうして酒でも飲みながら思う存分、別れを惜しんで泣けばいいのよ。その時でいいんだ。別れを怖がってちゃ駄目だ。
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by ling-mu.m | 2005-03-12 02:00 | 活字/漫画
えほんのはなし
連続投稿しすぎだなー。若干キモチワルイですね。まぁ書きたいことがあるんだから仕方ない。

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いしいしんじ作品を借りるために図書館に行ってみたら、小説が全部 貸し出し中でがっかり。
仕方がないので「トリツカレ男」と「麦ふみクーツェ」、「プラネタリウムのふたご」を予約してきました。はやく読みたいなぁ。
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代わりに何借りようかなーとふらふらしながら、友達が「あいうえおばけだぞ」という五味太郎さんの絵本の話を以前してたのを思い出して、検索してみたらあったので借りてきました。
あ から ん まで、45匹のモンスター。なかなか怖いよコレ。

おしりおばけはおしりがだいすき そうっとうしろからペロリとなめる
ころばしおばけは小石のおばけ けろうとする足つかまえる
まがりかどおばけはまちぶせおばけ まがりかどのむこうでわくわくしてる
よびだしおばけはとをトントンたたく なのにあけてみてもいたことない

などなど…ホントにおばけやん! ていうのがいっぱい。アタシがちっちゃい頃に読み聞かせられてたら泣いてたと思う。うん。
五味太郎さんの絵本にはお世話になりましたねー。それはきっとみんなそうね。
「おじさんのつえ」「ゆびくん」はタイトル忘れないくらいによく読んだ。絵本でタイトル覚えてるってあんまりない。というか、タイトルを覚えた記憶がない。内容は鮮明に覚えてても、タイトルが思い出せないものが殆ど。

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例えば、三匹の兄弟ヤギの話。確か がらがらどん、てな名前だった気が・・・。険しい山に住んでるの。絵がちょっと怖くて、色づかいもダークで、でも好きだったなー。ドキドキする話だったと思う(鮮明に覚えてないじゃん!)。・・・と言うわけで調べてみる。ネット万歳。
「三びきのやぎのがらがらどん」だって。あれ、色づかいそんなにダークじゃないや。でも内容は谷底の怪物と戦うっていう、なかなかハラハラする話。子どもって、意外と高いレベルで物事を処理できるんですね。
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タカが岩陰に肉を隠して後から食べようとするんだけど、戻ってみたら肉がない。犯人は誰だ? て絵本も好きだった。君は見てたんだろ? て、こっちに話しかける書き方がされてて、それがリアルだったんだろうね。・・・これは調べがつかなかった。実家帰れば一発なのにな。
と、思ったら、家族会議でタイトル判明。「きみはしっている」でした。しかも五味太郎さんだ! そしてタカではなくコンドルだって。
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あとね、最近 村上春樹が佐々木マキという方と一緒に絵本を出したんですよ。「ふしぎな図書館」ていう。で、佐々木マキって名前は知らなかったんだけども、絵を見て「ムッシュ・ムニエルの人だ!」と思い出した私、本日こちらも探してきました。
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久し振りの再会、「ムッシュ・ムニエルとおつきさま」。しかもシリーズものだったらしくて、これと並んであと2冊、「ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします」と「ムッシュ・ムニエルのサーカス」があったのでそれも借りてくる。
「サーカス」は絵が全然 違って、アタシはやっぱり「おつきさま」のイっちゃってるムッシュの目が好きなので、何か好きになれませんでした。面白かったけど。
この絵本のおかげで、ムッシュの後には否応なくムニエル、と付けたくなる現在のアタシ。
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絵本で他に好きなのは、ねずみ一家の「14ひき」シリーズ。確か最近、久方ぶりに新しいのが出たんですよね。まだ見てないけど。
お気に入りは「14ひきのひっこし」。彼らの新しいおうちがホントにホントに素敵なのだ! 秘密基地みたいな感じで、ちっちゃいアタシはその素敵っぷりに、ホントにとってもドキドキしてた。
いいなぁ、いいなぁと思ってた。秘密基地つくったことあったなーそういえば。小学生の時、家の近くの空き地に、ダンボールで。風ですぐ駄目になっちゃったけど。

思えばこの絵本を気に入ってた時点で、アタシの「家好き」「家建てたい願望」はできあがっていたのかもしれない・・・。
家 建てたいんです、自分で。理想の家。いち時期はやった家建てる番組、見まくってました。そして自分の建てる家を構想したりして。谷啓がナレーションしてるのが大好きだった。

今日は絵本ゾーンをあんまりうろうろしてこなかったので、明日はもうちょいゆっくり、懐かしい絵本たちを探してみようかなーと思います。自分の記憶を手探りしながら。案外 楽しいかもしんないよね。
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by ling-mu.m | 2005-02-22 21:06 | 活字/漫画
となり町戦争
b0026230_1531585.jpg好き:★☆☆☆☆

ある日、突然 届いたとなり町との戦争の知らせ。「僕」は、自分の通勤に支障が出るのではないか、程度にしか関心を寄せてはいなかった。しかし次に届いたのは、自分が偵察業務従事者となったことを知らせる通知。果たして「僕」は直接に戦争に関与していくことになる。その実感はいつまでも得られないままに。




三崎亜記・著。
新聞の書籍広告で見つけて興味が湧いて、買おうと思ったらバイト先が品切れおこしてて、いつまでも入荷しないので出先の本屋で買いました。
買うんじゃなかった。勿体無かった1400円+税。・・・いや、消費税ぐらいの価値はあったかなー。でもなー。
面白くありませんでした。
ちょろっと書かれたあらすじに惹かれて買ったのだけど、ちょいと期待ハズレ。

この物語の「戦争」は、自治体の「行政」の一環です。
町の活性化のために行われる、計画的な「予定」。議会で提案され、予算が組まれ、承認され、町の住人に知らされ、実施される。
住人たちは、それを半ば「当たり前」のものとして受け入れる。
でも、主人公である「僕」は、各地でこのような戦争が行われていることを知らない。行政で戦争が遂行されることが信じられない。
主人公ばかりが無知なのです。まるで一人パラレルワールドに迷い込んだような。
その設定が、どうもしっくりこなかった。もっと「戦争」に戸惑う人がいてもいい筈なのに、驚くほどに主人公だけがたった一人、何も分かっていないのです。暗黙の了解を理解できていない。

それに、「戦争」における戦闘行為が、あまりにも影ばかりで描かれている。
実際の戦闘シーンが出てこないのです。
行政とは言え戦争だから、兵士がいます。武器を持って戦います。戦死者も出ます。
でも、主人公が戦闘を目にすることは一切ない。だから、暗示される戦闘を気配で感じるしかない。
リアリティーを全く生まない方法で、戦争が描かれているのです。
何しろ主人公の目に、人が戦う姿、人が傷つく姿はまるで映らないのですから。
これは、もしかしたら筆者の挑戦なのかもしれない。
戦闘シーンを描かずに、どこまで戦争というものを表せるか。どこまでその恐怖や愚かさを表せるか。
もしそうだとしたら、その試みは失敗です。彼女の筆力では不可能だった。

戦争が行政、この発想は面白い。感情面を一切 排除し、誰も憎しみ合わない、恨み合わないというありえない戦争。それなのに人は死ぬ。
予定通りに開戦され、予定通りに終戦を迎える。全ては了解済みのこと。

ものすごく、読後感がキモチワルイのです。
それはそのまま、ここで描かれている戦争への気持ち悪さかも・・・そう思うと、私は筆者の思惑にまんまと嵌っているのでしょうか。
いや、でも、感情は動かされなかったから。感動もしてないし、憤りもしてない。
何も得ていない。だからアタシの負けではない・・・と思いたい。

冷たくて硬い。そういう印象の文章。
温度が低い文章は好きですが、もう少し柔らかい方がいい。
面白味がないのです。心に響く言葉もない。

帯で五木寛之や井上ひさしが絶賛してるんだけど、何を褒めてるんだか、アタシにはさっぱり分かりません。
買ってしまったのが、売り上げに加担してしまったのがすごく癪だ。腹立たしい。
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by ling-mu.m | 2005-02-22 02:00 | 活字/漫画
グラスハート
アタシが世界でいちばん愛してる物語。
若木未生の「グラスハート」。集英社コバルト文庫。既刊8冊(含・外伝)。
突拍子もなく、3巻の真ん中からとか読み始めて、止まらなくなって全部読む羽目になる。
いつも。

浜松に置きっぱで、我慢できなくて今回 持ってきちゃったんだけど、テスト前にやっていいことじゃなかった。
せめてすぐ何処かに隠しておくべきだった。無造作に床に放っておけるものじゃかった。
読まないでいられる訳ない。
おかげでテストとか勉強とか、そんな言葉 忘れた。

血がたぎる。
アタシにはやりたいことがあったんじゃんか。何で忘れてたんだ?
て読みながら、読み終わってからも、すごく思う。
熱いモノが、アタシを掴んで叱咤する。
その繰り返しで、繰り返してる時点で馬鹿だけど。

走らなきゃ、という思いが静かに満ちて、眠れなくなる。
目が醒める。光が見える。
目指すべき光。

天才音楽家がいて、そいつに見初められたドラマーの女子高生が主人公で、赤毛のギタリストと眼鏡のキーボーディストとが、頂点めがけて突っ走っていく、そういう話。
抜群にカッコイイ、アタシの一等賞の物語。


本編の方はうっかり手にとってはまって読んでしまうパターンなんだけど、実はex.(外伝)は違って、必要な時がくると読んでた。自分を励ますために。前を向くために。
どれをかっていうと主に「素晴らしき日々」と「New Days」。
昔は後者が一番だったけど、今は前者の方がよく読む。
土岐さんの言葉が、声が必要になる。今もそう。
少し前にふと、あー読みたいな、と思ったら徐々に徐々に必要度が高まってきて、切迫してきて、でも実はex.だけ置いてくるというありえない不手際を犯したがため、未だに欲求は満たされていない状態。
辛い。
ので、この際もう一冊かってしまおうと思い、生活圏にある本屋を巡ってみたものの見つからず。
仕方がないのでさっきアマゾンで注文しました。
何気にまだ読んでなかった「真・イズミ幻戦記」も一緒に買っちゃったから、このままテストの存在がアタシの予定から消え去るのは必至。残念。

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テスト勉強しない、なんて、今までのアタシの人生じゃ考えられなかった話ですだよ。
してなさっぷりに自分で驚いちゃうぐらい。
クソがつくほどじゃないけど、人並みに真面目でかつそれしかないような、つまんない人間だったから。
まぁ、それは目標あってのことだったし、そういう自分がいなければ大学に進学することもなくて、今 大事な人達の人生に掠りもしなかったかも、と思えば、許容できることだからまぁいいや。
別にアタシ中国語やるために大学行ってる訳じゃないし。
他のレポートはそれなりにまともなもの書いてるつもりだから、まぁいいや。

まぁいいや。
て、これまでの人生に足りなかったものかも。
大事にしよう。
それで進級できてなかったら笑えないけどな。はは。
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by ling-mu.m | 2005-01-17 02:24 | 活字/漫画
フランケンシュタイン
b0026230_457456.jpg海洋冒険家のウォルトンは、北極を目指し船を走らせていたところで一人の男と出会う。男の名はヴィクター・フランケンシュタイン。錬金術に魅せられた挙句、屍からより集めた死した細胞で一体の生物を造り上げてしまった科学者である。彼は、己が創造した怪物を追っているところだと言う。怪物を抹殺するために。
一人の男が破滅していく様と、怪物の奇妙で悲しい物語、そして二人の行く末が描かれる。
わずか19歳の少女が紡いだ、今もなお語り継がれる怪物の誕生物語。

メアリー・シェリー著。私が読んだ創元推理文庫の訳者は森下弓子。
出版は1818年。187年前・・・ですか。『詳細 世界史』の域ですわな。

レポートの課題図書でして、読んでみたらなかなか面白かったので紹介してみようかと。
一般に知られている「フランケンシュタイン」が、実は怪物の名ではなくそれを作った科学者の名前だと言うことは、多分そんなには知られていないことなのでは、と思いますが、どうでしょう。少なくとも私は知らなかった。本来の物語の中では、怪物は怪物でしかなく、固有の名前を持たないのです。それが、今となっては憎むべき創造主の名で呼び馴らされている。因果なものです。
おそらく、人々に共感を生んだのは怪物であって、科学者よりも重要な存在だった。だから、タイトルである「フランケンシュタイン」が、読者にとって大事な人物であり、より印象の強い怪物の呼び名に自然と移行してしまった。・・・のではないかと。個人的には思ってます。

読みやすいです非常に。語り口調ですので。語り手はウォルトン→ヴィクター→怪物→ヴィクター→ウォルトンと変化していきますが、混乱することもなく、スムーズに読み進めることができると思います。
内容も分かりやすい。ホラーではないです。全然 怖くはない。

科学者は悪。怪物は善。
私の中でははっきりと線引きができています。覆ることはない。
科学者、ヴィクターの語りが大部分を占めるのだけど、この上なく胸くそ悪いものです。エゴと被害者意識にまみれた腐った精神しか、こいつは持ち合わせていない。
怪物を造り上げたのは他でもない自分なのに、その醜悪な姿に慄き無責任にも放り出し、怪物が侵した罪の根本にある原因を考えもせずに、彼を憎み罵り蔑んだ。そして彼と交わした約束も破棄し、何だかんだと言い訳をしながら己の幸せを追い求め、結局は全てを失い、そこで初めて怪物を殺しにかかり、追いかける。
何が気に入らないって、「おまえの婚礼の夜に、きっと会いにゆくぞ」と怪物に言われ、今までの怪物の行動を見れば何をされるか分かりそうなものなのに、意味の分からん思い違いをして結局、自分は生き永らえているところです。どうしたって元通りにはならない人生、そこから何も知らぬ人々を自分の手を汚すことなく消し去るつもりだったのでは、そのために半ば強引に自分が殺されるのだと思い込んだのでは、と疑いたくなる。
言葉が多すぎなのですよ。誰かが死んだ時、とにかくこいつは喋りまくる。嘆きの言葉を、恐ろしく豊富なボギャブラリーでもって並びたてる。そこがいけ好かない。――これは、海外小説の特徴なのかも、とも思いますが。シェイクスピアに代表されるように、向こうの連中はとにかくよく喋る、て印象がある(シェイクスピアは戯曲だから、喋らにゃどうしようもない、てのもありますが)。
とにかく、その言葉が胡散くさいことこの上ないのです。愛する人の死を防ぐためにヴィクターにできたことはいくつかあった筈なのに、それらが見えない振りをして、後の祭りになった時に嘆き悲しみ後悔する。その狡さに反吐が出る。
でも、悲しいかな、彼は人間の本質を表している、それもまた真実なのです。
蔑み嫌悪するのは、自分の中にも彼と同じものがあることを感じるから。利己的で、自分が一番 可哀想だと嘆くヒロイズムは、私の中にも確かに存在してしまうものなのです。

一方で、怪物もまた、人間なら誰しも持っている性質を表した存在であるのです。
怪物は、孤独を恐れ嫌がっていた。その思いは自分の愛したある人間の一家に、その醜悪な姿のために慄かれ受け入れてもらえなかったことで増幅し、人間世界で生きることを彼に諦めさせた。しかし、“生”そのものへの執着は消えなかった。幸せな日々を求める心が、伴侶を造って欲しいという創造主への依頼を呼んだ。
他者に嫌われることに怯えながら、愛を欲しがって不器用に生きる、その姿はまさに現代を生きる人間の姿なのではないかと。この物語が作られた時代を思えば、現代と言わず普遍的な在り様ですらあるのではないかと。思ってしまうのであります。
怪物は言います。「自分は誰だ? 何者なのだ? どこから来たのだ? 自分の運命は何なのだ?」(168頁)
これは絶えず我々も考えていること、この答えが欲しくてあがいている人は決して少なくない筈です。それぐらい、みんな自分に自信がなくて何者かになりたがってる。怪物は、そういう気持ちの反映なのです。そんな怪物を愛おしく思うなと言う方が無理な話で。
でも、実際に自分の目の前に怪物が現れたら、その姿形に驚いて恐怖を覚えて、それきり彼と分かり合おうなどということは・・・・・・・しないんでしょうなぁ、きっと。それが分かってしまっているというのも悲しい話。結局はどこまでも、自分はヴィクター的な存在だということなのでしょうか。

「ヴァイブレータ」とか「ハッシュ!」とか、「アカルイミライ」もそうだけど、この辺の映画を観た時に思うのは、弱くて脆い人に優しい世の中であって欲しいと。ちゃんと一人で立ってられない人達が、少しでも傷つかない世界になればいい、てことなんだけど。
この怪物にも、少しだけ、同じような「弱者」の影を見たのです。だからまた、思ったのだ。特にこの怪物は「善人」だからさ。イイヒトが幸せになれる仕組みに、ホントはなってなきゃいけないのにな、とは、普段の生活で善人に接するたびに思っていることなので。私は善人じゃないからさ。ごめんなさい、て気持ちもこめて、思うのです。

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徹夜明けの頭で勢いに任せて書いてしまいました。レポート書いてたら、もはや一限に間に合うように起きる自信がなくなる時間だったので。
今日は1・2限 出た後夜までバイトだ。頭働かないんだろうな。
試験勉強、というものを全くしていないままにテスト期間突入です。あーあ。
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by ling-mu.m | 2005-01-11 06:29 | 活字/漫画
すごい表現力
見よ!! 貞操の洗濯場を爆進する童貞の機関車の英姿!!
飢餓と貞操の対峙、生活と性欲の争闘を続ける凄惨な絵巻を、人類の二大使命を交戦せる地球上を、無軌道に爆進する装甲車。唇の磔、乳房の手溜弾、素足の砲列、アルコールの嵐、うヰンクの煙幕を衝いて猛進! 猛進! 轟然天地に響く吾等の機関車の巨吼を聞け。
見よ!! 童貞の機関車の爆進するところ、不景気を吹きとばし、貧乏神は戦慄す。

以上は、ある本の広告スペースに載っていた、『童貞の機関車』という本の広告文。
ちなみに著者は“ドクトル島洋之助”とあります。
読んでみると、いかにもーな昔っぽさを感じません?
これ、実は昭和初期の広告なのです。
(広告が載っていた本の発行が昭和六年なので、同時代のものと思っていい筈)

どこが、って言及できないんだけど、古臭い匂いがぷんぷんしてる。
書いてる側は真剣で、おそらく当時の読者も普通に受け止めたんだろうに、21世紀に生きる人間にとっては何故かギャグになってしまう。
うーん。面白い話。

他にも広告が載っていたのでついでに紹介。
『猟奇風俗百貨店』、長河龍夫・著。
殺人的不景気の現代生活に於て獨り色情文化だけが他の文化頂を超越して、奇形的に発達し、今や正に其露出時代を出現しつゝある。見給へ銀座街頭を練り歩く我等のイブ達が、
▲棒紅とコンパクトで叩き上げた顔。  ▲透いて見へるワンピースの薄物。
▲臀部へずり下がったバンド。      ▲危げな足の痛そうなハイヒールの靴。
▲素足に紛らう肉色のスタツキング。  ▲不恰好な槌の一様のパラソール。
それで曲がつた不恰好の足を惜しげもなく大股に闊歩し『どう私の脚線美』はてな顔をするモダン、シークレデーの瞳は果して我等に何を囁くか?
洗へば清浄に返へる』と云ふ貞操観を持つ欧米の女性『世界一の貞操を誇る』日本の女達は果してレビユー、シャズ、チャールストンと此の速やかなテンポの反映に毒せられず誘惑されないのであらうか?

『貞操の洗濯場』、ドクトル島洋之助・著。
驚異すべき世界人肉市場
『洗へば清浄に返へる』と云ふ『貞操観念』を持つ欧米文明國女性の好色と淫蕩とを縦横に論じ、カフエー酒場レビユーが織り出すジャズの――歡楽境の交響楽――を通じて、暗黒と陰惨のモザイクを巧に描寫し大戦後の爛熟せる世界の人肉市場に乱舞せる情痴、感覚を一目瞭然たらしめたものが本書である。


・・・・・・ホントはもっと難しい漢字たっぷりで情緒あふれてんだけどね。めんどかったの。ゴメンナサイ。実物見ると感動するよ。
写してて思ったんだけど、古臭さを感じるのは書いてある内容にも因るんだね。
いやぁ、新鮮。
こういう歴史へのb0026230_0372276.jpg触れ方もあるってことだ。ね。
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by ling-mu.m | 2004-12-01 00:39 | 活字/漫画