2009年 04月 13日 ( 1 )
砦なき者
野沢尚・著『砦なき者』を読了。
読んだことがなくて、読んでおくべきかな。と思ったので。

いつかにドラマでやったのを覚えていて、しかしそれを全編通して観た記憶はなく、妻夫木聡が悪役に挑戦、ていう番宣が結構デカくされていたことと、森の中で役所広司と妻夫木が対峙していた場面、それだけは何故か執拗に頭に残っていたのです。

小説とドラマでは若干 登場人物が違ってたり減ってたりする模様、でもドラマ脚本も野沢尚が手掛けたそうです。彼にとってはこれが遺作なのかな? もう一作ぐらいあるのかな?


マスコミ、特にテレビ界の功罪を描く…というような内容。
予想はしたけど、怒りとも嫌悪ともつかぬものが込み上げてくるのを必死で我慢しながら、読みました。
なるべく文字の表面を追うように、感情移入しないように。
そんなに情感豊かな文章という訳でもないので、そこまでしなくても特定の人物や感情に没入するようなことはなかったとは思うんだけど。

もともと、あんまりテレビの業界にはいい感情を持っていません。
具体的に何がってことはないんだけど。何となく。
いや、もちろん見ますよ、見るし好きな番組だってあるしね。
でも、時として、無駄なもの垂れ流しやがって、とか、殿様商売しやがって、とか、思う瞬間はありますでしょう。

この小説の舞台は報道番組で、報道被害を訴えることで若者たちのカリスマになった青年と壮年キャスターとの対決が描かれる。
でも本当は青年には裏の顔があって…みたいな。

登場人物の熱血な感じが、『クライマーズ・ハイ』に重なるなぁ、と思いました。媒体は違っても、同じ報道現場となると繋がるものがあるのでしょうね、きっと。


すごーく違和感を覚えながら読んだのは、カリスマとなる青年・八尋の、まさにそのカリスマぶりに、で。
たくさんの若者が、八尋をまつりあげてその手足になって、犯罪者になることも厭わない。
そんな現実…果たしてありうるのか? と。

それは、そんなことはあってはならない! て、私の中の正義感が鳴らす警鐘でもあって。
本当にありえたらどうしよう、ていう不安が思わすことなのです。

映画や小説や漫画や、そういうものの中で、集団による分かりやすい悪意に触れる度、人間ってこんなに単純なもの? て、常々思っていて。
もっと良心的で秩序があって複雑な思考と思慮深い行動をする、そういうものなんじゃないの? て。

でも、分かってんです、本当は。
そんなの理想的すぎるって。


せめて自分はそういう風に生きられるように、と思うけれども。

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by ling-mu.m | 2009-04-13 20:25 | 活字/漫画