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胎内
夜中に、たまらないものを観てしまったなぁ、という感想。
重い。ずっしりと重い。
先に光がないものを見続けることは、苦しい。

青山円形劇場でやった三好十郎・作、鈴木勝秀・演出の「胎内」を、BS放送にて観る。
出演は伊達 暁、奥菜 恵、長塚圭史。
チケットが取れなくて行けなかった舞台なので、観れると分かった時は喜んで、今日も時間を心待ちにしてた。

観なきゃよかったとは思わない。
寝て起きたらこの重さは忘れているかもしれない。
でも、とにかく、観終わったばかりの今、ずしりと、あの洞窟を閉ざした岩のように重いものが、胸中にはある。

戦争が終わって二年。
闇ブローカーをする花岡(伊達)は、仲間が捕まったことを機に、恋人のムラコ(奥菜)を連れて隠れるように温泉めぐりに出る。
次の宿を目指す途中、追っ手から一時的に身を隠すため、二人は岩穴に潜り込んだ。
そこにいた先客、佐山(長塚)は、戦時中、徴兵され、その穴を掘ったという人物だった。
復員したものの、家族に疎まれ妻には愛人ができ、家を追い出されフラフラした後にその穴に戻って来たと言う。
三人が洞窟に留まっている間に、地震により山崩れが起こり、彼らは穴に閉じ込められる。
しばらくは入り口を掘り進めてみるものの、日の光を浴びれる可能性は薄い。
そうして極限の状態の中、彼らは泣き叫び怒鳴り合い狂気に陥り、刻々と死に近づいていく。


伊達、奥菜は作りこんだ演技をする一方、長塚は割と自然体で演じる。
高飛車な花岡、スレているが心根は素直なムラコ、実直で弱い佐山。それぞれのキャラに見合った演技だったように思う。
奥菜は、最初に出てきた時に おおっ? と思わせる艶っぽさを見せてくれたのだけど、割にすぐ剥がれてしまったのが残念。それが計算づくだったら凄いけど、そうは見えなかった。
奥菜がやるケガレって色っぽすぎなかったのかなと思ったりした。

戦争にかり出されて、でも、「銃もなく、剣すらもなく、壊れかけたシャベル一本」で、ひたすら防空壕を掘り続けさせられた佐山。
復員し家に帰ったが、元より弱い自身の体はもうまるで使い物にならず、「一日働けば二日休まなければならない」、しかもインポテンツ(劇中ではインポテッドと言ってた気がする・・・)になり、子は母の真似をして自分をなじる、そんな家に身の置き所などある筈がなく。
悲惨な人生だなと思う。ついてない人だなと思う。
でも、こういう人はきっとあの戦争で沢山 出たのだろうなとも思う。
想像のつかない壮絶さを醸していたのだろうなと。

三人とも、戦地には出向いていない人間。
戦争が終わって、生き残ってしまった人間。生き続けなければいけなくなった人間。
そして、思いもかけぬ場所で、ただまんじりと、死を待たねばならなくなった人間。

閉じ込められたと分かった時、彼らは慌てふためかなかった。
まずは状況を疑う。本当に出れないのかと疑う。
こちらから掘り進めれば、もしくは向こうから誰かが気付いてくれれば、出られるものと思う。
しかし、いよいよ自分たちが危ない目に遭っているのだと気づくと、パニックを起こす。
冷静さを取り戻す。取り戻させようとする。
心はけばだったまま、チラつく「最悪の状態」を無視し、希望を見出そうとする。
でも抱えた不安と恐怖が心を乱す。動転する。口論になる。取っ組み合いになる。気が狂う。
大人しくなる。
そして泣きながら死を待つ。

なかなかパニックにならなくて驚いた。突然ムラコがパニックを起こして驚いた。
彼女は爆発するまで、じわじわと不安を溜めていたのだろう。
嘘だ嘘だと思いながら、しかし現実なのだと理解した時、叫ばずにはいられなかった。
そんな極限状態になることは、普段の生活でまずないことだ。
自分がその立場だったら、と考えると ぞっとする。
何もできず、信じもしないのに「神様」と唱え続けているだろう。

人間の心が壊れてゆく様。
健康なのに、大怪我をした訳でもないのに、確実に死に近づいてゆくことを、どう待てばいいのか。
あがくことなくその時を待つことなど絶対にできず、そしてそれが人間の姿なのだろう。

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もっと全然 違うところで思うことは沢山あるのだけども、言葉にできる気がまったく しないので取り敢えず保留・・・。
こういう、感想すら まとめて書くのが難しい芝居を、沢山 観て言葉にしていけたらいいなと思うんだけど、ねぇ。
精進せにゃ。
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by ling-mu.m | 2006-01-09 03:48 | 芝居/舞台
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