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絵描きの植田さん
秋の夜長はウツの元。
どっせい!!

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b0026230_21301143.jpg好き:★★★★★

いしいしんじ・著。
火事で聴力と恋人を失った植田さん。
雪深い山奥でひっそりと、最低限の仕事をこなしながら暮らす。
オシダさんや食堂のおかみさんは いい人。
ある日、氷った湖を滑って林母子が「向こう側」からやって来た。
娘のメイは、草木や鳥の名前に詳しい、よく笑う女の子。
スケートも上手。
植田さんの心の何処かにあったしこりを、とかしてくれた女の子。

短いお話。素敵なお話。
白い、きれいな装丁が好きです。
植田 真さんという方が絵を描かれてます。この絵も、また、素敵。

いしい作品の評で、「心が温まる」という言葉を、とてもよく目にします。
実際、そういう部分はある。多分にある。
でも、私にとってのいしい作品は、手厳しい現実を突きつける、幸せになるには一筋縄ではいかないんだ、それ相応の代償を払わなきゃいけないんだ、そして皆が幸せになれるとは限らないんだ、ということを訴えてくる、もので。
素直に「イイハナシだったー」なんて、とてもじゃないけど言えない。
温かさよりも切なさが勝る。思い出すと辛くて泣ける時もある。
読むのに、ある意味、覚悟の必要な作家さん。

でも、この物語は何だか素直に、心温まる、気持ちのいい読後感です、と言える気がする。
爽やかな、とすら言っていいかもしれない。
短いせいかな。余剰が無い。心があまりブレないうちに、読み終えることができるから。

メイの台詞で、最後のほうに書かれてる。

  私たち、こんなすばらしい世界に住んでいるのよ!

あ、言われた。と思った。言われてしまった。
こういう台詞が、ちっとも、これっぽっちも陳腐にならない。
いしい作品のチカラは、そこにあるんだと思う。
その台詞に、頷かざるを得ない展開をくれる。
その通りだと思わせる物語をくれる。
すごいチカラ。すごい説得力。

優しい、優しい物語。

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追記。
いしい作品に関しての記事を読み返してみたが・・・意外と、同じようなことを繰り返し言ってますね。あらら。
優しいハナシ、て感想が一貫してら。気付かなかった。
でも厳しいんだよなー。
「植田さん」も、時間がたつにつれ何だか切なく思えてきました・・・。
でもそれは多分 自分が今、幸せじゃないからだなー。
扱いに困る作家だ。
でも大好きなんだよなーっ。
・・・青汁、みたいな? ちょっと違うか。
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by ling-mu.m | 2005-10-29 21:58 | いしいしんじ
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