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天保十二年のシェイクスピア
秋のミーハー祭、第一弾。
Bunkamuraシアターコクーン(初!)にて「天保十二年のシェイクスピア」を観て来ました。
井上ひさし・作、蜷川 幸雄・演出、そして錚々たる俳優陣。
篠原 涼子、唐沢 寿明、藤原 竜也、夏木マリ、壌 晴彦、勝村 政信、高橋 洋、木場 勝己(順不問)らを始め、総勢43名による大舞台です。
特に目当ての人はおらず、こんだけ出てたらまとめて観るいい機会だわ、シアターコクーンにも行っときたいし、てことで頑張って一般発売日に取りました。中2階のA席、いちまんえん。

両端の斜めになってる所の真ん中ぐらいで、正直、あそこに席を作るのはどうなのよ・・・と思ってしまうよ。そりゃー安くはないチケット買って折角 観るからにはさぁ! 手すりとか隣の人とか気にしないで観たいじゃんか・・・。ぐすぐす。
こないだ行った天王洲アートスフィアの2階席も手すりが邪魔でねぇ・・・設計上 仕方がないことは分かるけど、分かるけど何とかして欲しいって言うよお客さんだもの!
採算とるためとか、キャパ大きくするためとか、理由は分かるけど。分かるけども、でもやっぱり、もっと快適な鑑賞環境を提供して欲しいです。

劇場への文句はあるけど、それ初っ端にあげちゃったけど(だって悲しかったんだもん)、芝居の話をしよう。
今作はシェイクスピア作品・全37作品をモチーフにして、全てを(その表し方の濃淡はあるものの)芝居の何処かしらに入れてしまった、というもの。
オイシイとこどり、と言えなくもない。一般的に有名な、読んだことない人でもシェイクスピアの書いたものだってことは知ってるような台詞は大体 入ってるから。

主役級はみんな、キャリアのある演技には太鼓判、ていう俳優さん達で、やっぱり正直、安心して観れたのかなという気がする。
一番ぐっとくる演技をしてくれたのは、棺桶作り職人の佐吉を演じた高橋 洋。

江戸に奉公に出ていて、独立していざ村に帰ろうとした際、江戸の土産にと吉原で遊んでみた。そこで出会った美しい遊女・浮船太夫(毬谷 友子)。
春にはきっとお嫁に行くから、と固く誓い合って別れ、佐吉は清滝村で太夫を待ち続ける。佐吉の母は、彼から太夫の話を聞くにつけ そんな上物の遊女が約束など守る訳がないと取り合わない。
しかし、彼女は約束通りやって来た。乞食の格好をして顔にも汚い細工をし、それは道中を少しでも問題なくやり過ごすためであったが、運悪く佐吉の留守に訪ねた彼女は、その身なりの汚さでこんな女に息子をやる訳にはいかないと考えられ、佐吉は死んだと嘘をつかれる。
そしてデタラメな墓に連れて行かれ、彼女はそこで佐吉と添い遂げるべく自らの咽を掻っ切って自害する。母に事の次第を聞き駆けつけた佐吉が再会したのは、もはや息のない愛しい人の亡骸だった。

て、ここで。太夫を見つけ、彼女が死んでいると分かった時の言葉にならぬうろたえようと途方もない悲しさ、混乱、事態を受け入れたくない気持ち、が、ないまぜになって伝わってきて。
すごく辛い気持ちにさせられた。軽く泣きそうになったさ。
本当に悲しい時、人間は何にも言えないものです。訳も分からず、ただ泣くことしかできない。
その時 押し寄せた哀しみに心を全部 持っていかれる。
竹内結子もこういう演技 上手いんだよね。彼女の演技には泣かされる。

当然 佐吉はそこで浮船を追って死ぬ。ロミジュリですね。
もうひとつ、明確にロミジュリがモチーフになっているカップルがいて、敵対する両家に属するきじるしの王次(藤原 竜也)とお光(篠原 涼子)。このカップルがまた良かった・・・。
というか、藤原の無邪気さだね。それにやられました。ハイ、格好いいです藤原 竜也。別にそんな好きでもないしー色気あるし上手いとは思うけどーなんてスカしてるのはもう、やめます。
きゃー!! だわ。騒ぐわ。鼻血も出すわ。いや、鼻血までは出んが。
なんつーか・・・若いよね。みなぎってます。ほとばしってます。同世代でいることが恥ずかしくなる人の一人だわ。
彼の演技は基本 暑苦しいので映像に向いてるとは思いませんが。舞台で観る限りでは、他の役者を食っちゃう曲者、のように思えます。何とも言えない雰囲気がある。
王次が死んだ時、客席がどよめいたよ。話的にいきなりでビックリした、て以上に、藤原が演じた役が死んだ、てことに慌てたんだろうね。

篠原 涼子は歌がうまい。映像の方で最近めきめき女優としての格を上げてる彼女ですが、舞台でも素敵でした。

主役・佐渡の三世治を演じる唐沢 寿明も、素晴らしいダークヒーローぶりでした。
のし上がりたくてギラギラしながら、言葉巧みに人の心理を操って事態の黒幕となり糸を引く。虚栄、嫉妬、疑心、欲望、人間のこころに潜む様々な気持ち。そういうものにつけこんで、己が出世にいとも簡単に利用する。そのあくどさと言ったらない。
でも、三世治は結局、自分自身を愛せなかった、誰にも愛されなかった哀れな人。
せむしでびっこひいて顔には火傷のあと、醜いその姿に、無宿者の卑しい生まれに、激しいコンプレックスを抱えてた。自分が嫌いな自分を、だまして裏切ってなりあがっていったんだと、いう気が、する。
愛する女の体以外、全てを手に入れた彼は、結局その手で、我が身を亡ぼす種を蒔き、芽を出させ、大輪の花を咲かせてしまった。
あまりにも哀しい、小さな男の顛末。

あと、狂言回しを務める隊長役の木場さんのまなざしが、すごい、言いようのない説得力を持ってた。
これと言った表情を見せる訳でもなく、しかしそのシーンをじっと見守るその姿に、何か感じるものがあった。憧れ、とか、そういう類のものかもしれない。


初演時は上演時間が5時間に及び、最後に近づくにつれ終電のお客さんがどんどん帰っていった、という凄い過去を持つ作品。
今回は井上さんの手で縮められ、それでも一部2時間、二部1時間40分という長丁場。それでもあんまりケツが痛くなんなかった椅子の座り心地のよさは嬉しかったです。
戯曲を読んでみようと思う。
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by ling-mu.m | 2005-09-16 01:22 | 芝居/舞台
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