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トリツカレ男
好き:★★★★☆
b0026230_22363145.jpgここ一週間ぐらいね、何かすごい泣きたい気分なのね。
何となくね、わぁぁーって、泣きたいのね割と常に。
理由はよく分からん。分かる・・・理由ができる瞬間もあるけど、変にぐるぐる渦巻いてる感じで、特に理由もないのに泣くのは嫌だなーと思って結局 泣いてなくて。
で、解決策として適当に感動の涙とか流せば落ち着くのかしらんと思っての、セレクション。
一応、厳選はした。ありきたりな感動はしたくないなと思って。


いしいしんじ・著。
いしい作品は四作目かな。「麦ふみクーツェ」のレビュー、挙げてないけど。

ジュゼッペは、色んなものに「トリツカレ」てしまう変わり者。
オペラ、三段跳び、昆虫採集にサングラス集め、探偵ごっこやハツカネズミの飼育。
町のみんなは見慣れたもので、彼が新しいものにとりつかれる度に苦笑しながら聞いてやる。
「今度はなんだい、いったい何にとりつかれてるんだい?」
そんな男がある日とりつかれたもの、それは外国からやって来た少女・ペチカだった!

すごい、すごい素敵な話よ。
読み終えたばかりだけど、アタシの心はとても温かいもので満ちてますもの。
いしい作品で幸せな気分になるのは初めてです。今までは、とてつもない切なさに襲われてばかりいた。とても好きなのは確かなんだ。大好きだよ、いしい氏の書く小説は。
でもねぇ、現実の世知辛さをたっぷり含んだ物語だから、浮かれきれないんだ。この先も、この人達の人生はきっと色々 波立ちながら進んでいくのだろうなぁ、と、しんみりしてしまうの。
それが悪いことってんじゃないんだけど、そういうのじゃない、とにかく真っ直ぐなハッピィエンドっぷりが、今は求めたいものだったので。

勿論、悲しい現実も転がってる。人間が生きてる限り、それはしょうがない。避けては通れないものだから。そういうものを、この人はすごい突きつけてくる。すごく簡単に人が傷つくし、失敗するし、あっけなく死ぬし。
でも、それは物語に必要なできごとなんだ。いしいさんは、絶対にそれを無駄にしないの。
ミスチルの歌で、駄目な映画を盛り上げるために簡単に命が捨てられていく、ってあるけど、この人の書くものにはそういう安易さを感じない。ものすごい痛みと意味を持って描くから。

いしい作品のどれにも見られる傾向だけど、変わり者がちゃんと笑って暮らせてるのがいい。
疎外され理解されない者もいるけど、例えばこのトリツカレ男、何かにとりつかれちゃうとホントにどっぷりでしょうもない奴で、でも、オペラにはまって誰彼 構わず歌いながら話しかけてしまうジュゼッペに彼が働くレストランの主人は言うんだ。
  しょうがないよな、トリツカレ男なんだから
  しばらく休みをやるよ、その癖がなおったら店にでてきな
ってさ。こんな優しい話がある?
その点「麦ふみクーツェ」は結構シビアだった。他人と違う人間が如何にうまく生きていくか、て話。でも、ちゃんと優しさは含まれてた。そのバランスが絶妙なんだ。

この本は、他の彼の作品に比べ薄い。一時間もあれば読めてしまう。
そのため、彼の伏線の妙はあまり発揮されていないように思う。勿論、無い訳じゃない。ちょっと少ないかなと思うだけだ。
でも、たまにはこんな単純な話もいい。ひたすらハッピィエンドを目指すには、これぐらいがちょうどいいのかもしれない。



で、当初の目的は果せたかっつーと、否。
もうしばらく、このまんまで過ごさなきゃならんみたいだ。はぁ・・・。
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by ling-mu.m | 2005-04-11 22:52 | いしいしんじ
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