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オイル
先日WOWOWにて放映された、NODA・MAP第9回公演「オイル」を観た。
野田秀樹作品を観るのはこれが初めて。
「赤鬼」の存在を知った時はもうチケットが売り切れてた。いつか放映してくれないだろうか。
しかし、芝居はやはりナマで観たい! と、心底 思った。TVで観るなんて邪道もいいところだ。
観たくなったら、あなたがいつでも最前列。とか言ってDVD売り出してる劇場があるけど、そんなん全然 嬉しくない。いや、嬉しいんだけど、それが本音だけど、でもやっぱり悔しいだろう。
ライヴであること、が、「芝居」の大きな醍醐味な訳だから。

これを観て興味が湧いて、氏の著作「二十一世紀最初の戯曲集」をちょろっと立ち読みしてきたのだけど、そこに載ってた「農業少女」のパンフレットから転載されていた文章に、やられた。
アタシはこの人の書くものがきっとすごく好きだと思った。


今作の主演は松たか子と藤原竜也。片桐はいり・土屋良太・小林聡美らが脇を固める。野田氏自身も出てて、ああこの人は俳優もやるんだと初めて知った。奔放な演技っぷりに、芝居への愛を見た気がする。

舞台は島根(出雲)。
基本となる時間軸は第二次世界大戦が終結した直後。それに、国譲り神話の「古事記」世界が絡み、次第に繋がっていく。

とにかく、話の奔放さというか、大胆不敵さに驚いた。台詞もなかなか過激でよろしい。
出雲は実はかつてイズラモと呼ばれており、マホメ(ット)が島根在住だった、とか。
戦後、占領軍が油田を発見するために島根にやって来た、とか。
物語の前提となっているものそれ自体がギャグで、非常におかしい。
んな訳あるかい! と、ベタに突っ込んでしまう。しかし、その作り込みようは凄い。うまい。

とても複雑な話で、それを簡潔に説明する力量がなくてもどかしい。
とは言え、それだけ複雑な話なのに、伝わってくることはとても明瞭だ。
それは、松演じる富士(電話交換手の娘で、この世に在らぬ者と電話を通して会話をする)の台詞に現れていると思う。

 「そんなに恨みは簡単に消えるものなの?
  一ヶ月しか経ってないのよ あれから。
  どうしてガムを噛めるの、コーラを飲めるの、ハンバーガーを食べられるの?
  この恨みに時効はあるの?
  人はいつか忘れてしまうの?
  原爆を落とされたことを」

富士は、弟を原爆により奪われた。弟の、十万人の命が消えるその瞬間まで、彼女は弟と電話していた。弟は溶けて消え、残ったのは声だけだった。
富士さんはアメリカに復讐しようとする。復讐心を古代人に植えつけようとする。
愛する人がサリンで殺されたのなら、相手をサリンで殺し返せ。それこそが復讐法、復讐は愛を、敬意を内包する。復讐こそ美徳だ。そう彼女は言う。
それは、理不尽 極まりない方法で愛する人を亡くしたものの哀しみだ。
戦時、日本中に、世界中に散在していた感情だ。

日本人の殆どはもう、想像でしか戦争の痛みを語れない。
例え同時代に事が起こっていようが、日本人が拉致られてようが、首を切られてようが、所詮それはヒトゴトだ。しこりを残す痛みにはならない。
だが、戦争の、原爆の痛みは、語り継がなければいけないものだと私は思う。偽善かもしれないが、そう思う。
その悲しみを、自らの体験に見出すことは難しい。それこそ、酷いやり方で親しい人を殺されるとかじゃない限り。
それでも、その痛みを、愚かさを、二度としてはいけないことだということを、語る人はいなければならないのだと思う。いや、いて欲しい。私のただの願望だ。

これは別に、声高らかに戦争反対を叫んでいる舞台ではない。
いち個人の、大切な人を殺された悲しみと憎しみが描かれた物語だ。

 「もしも天国があるというのなら、何故あの世に作るの? この世でないの?
  どうして天国は今ではなくアフターなの?」

それに答えてくれるなら、あなたのこと信じてもいいよ、神様。
富士さんの最後の言葉。
あの時代、今よりどれほど真剣に、人々は「神様!」と願っただろう。

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久し振りに(録画とは言え)大舞台を観て、いやーまだまだ勉強しなきゃいけないことがありすぎるなと、改めて自覚した。
舞台のいろはと言うか、公式を知らないんだ、アタシは。だから、応用されていたとしても気付けない。
何にでもベーシックがあって、それをどうこうして演出家は自分のものにしていくんだろうと思うのだけど・・・まぁ、とにかく、数こなすしかないのかなぁ。
途方もない話だが。仕方ない。

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追記。
「赤鬼」、そういやこないだビデオに撮ったんじゃんか・・・ちょっと前のコメントでめっちゃ話題にしてるのにころっと忘れてた。阿呆でごめん南。タイバージョンも放映してたのねぇ。ちょっと観たかったかも。取り敢えず日本とロンドンを観ねば。
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by ling-mu.m | 2005-04-03 23:27 | 芝居/舞台
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