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ぶらんこ乗り
b0026230_3541450.jpg好き:★★★★☆

高校生になった「私」に、おばあちゃんが差し出した数冊のノート。それは、最愛の弟が書き綴ったあの頃の日々と沢山のお話。よみがえる、幼かった私と弟。私に、弟に、ふたりに降りかかった出来事たち。途方もないやさしさと哀しみを内包した物語。

いしいしんじ・著。
人気のある作家として認識し、いつか読まねばと思いながら長い時を経てやっと手に取りました、いしい作品。
文庫になってるのがこれだけらしく、手始めに読んでみた。

久し振りに、小説を読んで泣きました。
「とても、とても、いいところで」の最後で涙がこみあげ、「三枚目のはがき」を読みながらぶわぁっと。泣きました。気持ちよく。

「私」の一人称で、弟のこと、父さん、母さん、おばあちゃん、犬のことが描かれる。それから学校のことや町の様子もちらちらと。
でも一番 大事にされてるのは弟との交流。
とんでもない天才で、哀しい運命を背負ってしまった弟は、たくさんの「おはなし」を作っては語ってくれた。「私」はそれが大好きだった。そして弟が大好きだった。弟もおねえちゃんが大好きだった。
でも、「私」は弟の人と違うばかりにどこまでも孤独な心を、埋めることはできなかった。彼はどうやっても一人ぼっちだった。それが何とも悲しくてもどかしくて、でも、現実なのかなぁと思った。ハッピィエンドはずるいのかなぁと思った。

弟の語る「おはなし」が、もうそれ自体で絵本作れるんじゃないの、というほどに完成度が高くて素敵で大好きです。
「私」の性格も、勝気で口が悪くて気分屋で、あら何だかアタシみたいという子なので好き。全然「いい子」ではないのです。そこがいい。
間抜けな母さんや、辛辣なおばあちゃんも好き。おばあちゃん、カッコイイです。そしてちょっぴり可愛らしい。

この人は、すごい。
単純にそう思います。すごい物語を書く人だ、と、デビュー当時 言われたそうです。なるほどその通りです。
「小説」はつくりものであって現実の鏡写しではないのだからルールなんてないのだね! と。
目から鱗とはこういうことを言うのかもしれません。軽く電流が走る感じで、読み進めてました。
バランス感覚がとてもいい人なのではなかろうかと思います。いやいや現実ではありえないですからーということを、そう言わせつつももっともらしく書く・・・しらけさせないのです。説得力があるのです。いやはや。

ぶらんこが重要なモチーフとして使われているのですが、ここまで美しく無駄がなく小道具が使われた作品を、かつて読んだことがあっただろうか。
犬の設定と、その使い方も素晴らしい。家族の彼への接し方もリアルで、それぞれの個性を映し出している。何にも、ちっとも、無駄じゃない。
ものすごい構成力です。天然だったら怖いです。ものっすごい考え抜いての結果であって欲しいなー。何しろ天才肌にはすぐ反感を抱くアタクシですので。

この物語に関しては感服です。
はやめに他の著作も読みたいです。好きな作家さんの一人に、加えられるといいな。
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by ling-mu.m | 2005-02-22 04:34 | いしいしんじ
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